映画「生まれては見たけれど」の中に、普段ブスッとしている父親が上司の前でペコペコしているのを見て、兄弟二人が落ち込むというシーンがありました。やや似た話。親戚の結婚式の時。花婿の家の座敷をぶち抜いた会場でのこと。場が進んで余興になる。三味線の音に乗せて出てきたのは父親。浴衣に手拭いをかぶって、その端をくわえて女形のつもり。日頃の姿からはとても想像できません。流し目なんぞくれて、ヤンヤの喝采でしたが、私たち家族はドン引き。終戦後の抑留生活で覚えてきたらしい。使役作業に出て、食って寝るだけでは精神的に不健康であるとの理由で、兵隊たちの素人演芸会の産物です。