中学の卒業式の帰り、皆が三々五々、学校から続く橋にさしかかった時、前の方で学生帽が空に舞い上がり川面に落ちていきました。学生帽は帽章や白線を付けかえて、高校でも使うもの。放り投げたのは高校に行かずに社会に出る一人の生徒。そんな同級生は学年に五、六人いました。その心情はいかばかりか…と思いますが、当時は深くは考慮しません。大工、板金業の家業を継いだ者、養成工で工場に行った者、看護婦見習い、料理人見習いなどが進路でした。彼らは、職場での懇親会の時に困らないようにと、地元の民謡や踊りの講習を受けていました。それが雑誌のグラビアに載ったことがあります。